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袋井市の空き家活用希望者掲示板が示す、バンクの次の一手

袋井市の空き家活用希望者掲示板が示す、バンクの次の一手を表すイメージ画像

ニュースの概要

静岡県袋井市は、空き家を探している人や活用したい人が希望条件を登録し、公開する「空き家活用希望者掲示板」の運用を始めました。従来の空き家バンクは、所有者が物件を登録し、利用希望者がそれを探す流れが中心でした。今回の掲示板はその向きを逆にしています。まず「使いたい人」の声を見える化し、所有者や不動産事業者が掲示を見て声をかけられる仕組みです。登録される物件が少ないという自治体共通の悩みに、需要側から切り込む試みと言えます。

引用元: 「空き家活用希望者掲示板」の運用を開始します!(袋井市)

分析・見解

物件を待つ仕組みから、需要を見せる仕組みへ

空き家バンクの多くは、所有者が物件を登録して初めて動き出します。ところが所有者の側には、仏壇や荷物が残っている、他人に貸すのが不安、誰に相談すればよいか分からないといった心理的な壁があります。その結果、登録物件が増えず、探す人も離れていくという悪循環が起きがちです。

袋井市の掲示板は、この順番を入れ替えました。「こんな条件で、こんなことに使いたい」という声が先に並べば、所有者は自分の家が誰かの役に立つかもしれないと具体的に想像できます。売る貸すを決める前の「そっと背中を押す材料」になる点が、この仕組みの本質です。

全国の空き家バンクが抱える登録数の壁

総務省の住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万戸を超え、住宅全体の約13%に達しています。そのうち、賃貸や売却の対象にもならない、いわゆる「その他の空き家」が約385万戸あります。空き家バンクに載る物件はこのごく一部にすぎません。

自治体によっては、バンク登録が年に数件にとどまり、担当者が所有者宅を一軒ずつ訪ねて説得する例も多くあります。供給側を増やす努力には限界があるため、需要側の情報を先に出して、所有者の関心を引き出す方法に価値が生まれます。就職活動でいえば、求人票を待つだけでなく、求職者のプロフィールを企業に見てもらう逆求人に近い発想です。

袋井市という立地が持つ強みと、運用上の落とし穴

袋井市は東名高速や東海道新幹線の駅が近く、浜松と静岡の中間にあって、通勤圏として人気があります。山間部の過疎地とは違い、「使いたい人」が一定数集まりやすい土地柄です。地方移住だけでなく、近隣からの住み替えや、小さな店舗、工房、教室といった事業利用の需要も見込めます。

ただし、掲示板は置いただけでは機能しません。希望者の情報をどこまで公開するか、個人情報をどう守るか、所有者からの連絡が来たときに誰が間に入るかを決めておく必要があります。成約まで伴走する担当者や、地元の不動産事業者、建築士との連携がなければ、掲示が増えても話がまとまらないまま終わります。

他地域への波及と、民間の出番

同様の需要掲示は、移住希望者の登録制度や空き家活用のマッチング会という形で各地にあります。成果が分かれる分かれ目は、登録後の追いかけ方です。連絡が来ない掲示板は数か月で人が離れます。袋井市の取り組みが成功すれば、他の中規模自治体も追随し、需要データを軸にした空き家対策が広がるでしょう。民間にとっては、掲示された希望条件が、そのまま見込み客リストとして読める時代になります。

ビジネスへの影響

不動産・改修事業者は掲示板を営業の入口にできる

希望条件が公開されていれば、事業者は広告費をかけずに、探している人の顔が見える状態から提案を始められます。たとえば「古民家を改装してカフェをしたい」という掲示があれば、改修費の概算と用途変更の見通しを添えて所有者に提案できます。物件を仕入れてから買い手を探すのではなく、買い手を見つけてから物件を探す順序に変えられるため、在庫リスクが下がります。

所有者への働きかけは、需要の声を添えて行う

空き家の所有者に連絡する際、「活用しませんか」と一般論で話すより、「近隣でこんな使い方を探している方がいます」と具体例を示すほうが反応は良くなります。相続した実家の扱いに迷う人は、売却よりも「誰かが使ってくれる」ことに安心を感じる傾向があります。

自治体と組む事業者に求められる三つの備え

一つ目は、相談から契約までの窓口を一本化し、掲示を見た所有者を取りこぼさないことです。二つ目は、改修費や補助金の目安を先に用意しておくことです。三つ目は、成約後の管理や近隣対応まで含めた継続的な関わり方を設計することです。掲示板は入口にすぎず、信頼を積み上げた事業者に案件が集まります。

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